だめな空気を変えたいときに聴きたい|ライヒ《トリプル・クァルテット》

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あまり運のいい人生を送っていない僕なので、なにかと落ち込むことは多いです。

でも、うまくいかなければ、無理をすればするほど、疲れてしまう。だめがさらにだめを生んでしまう。負の悪循環ですね。

音楽を聴くことは、人生の本筋とは関係ない。でも、なにかを変えたいときに、バックグラウンドで支えてくれる。

落ち込んでいるので勇気を奮い立たせたい、どんよりした雰囲気を爽やかな気分に変えたい、そんなときに僕がよく聴く音楽の話をしようと思います。

 

その一枚がライヒのミニマルミュージックです。

 

スティーブ・ライヒの音楽で高い頻度で再生したくなるのが、《トリプル・クァルテット(Triple Quartet)》というアルバム。

正直いうと、このアルバムの表題作以外の曲が個人的には好み。いつも「ごめんね」と思いながら、トラック4からあとを聴いています。それでも十分満足できるのは、前向きにさせてくれる音楽だからです。

 

 

ほんとうはCDジャケットの解放的な風景写真を、手元に置いて聴けるとベスト。ジャケット写真にも力が入っています。今さら紹介しても中古以外でのCDの入手は困難らしいので、音楽配信で補うのがベター。ジャケット写真が活きないというのは、オンライン配信の泣きどころですね

実はCDのプラスチックケースを包んでいるカバーのデザインが、ネット上で見ることのできる2×2の4枚1画像のデザイン。CDケースに入っているブックレットには3×3の9枚1画像の風景デザインとなっています。なので、もし中古なんかで見つけたら、あれ?違う、ということにもなりそうな感じがします。念のため。

カバーデザインの詳しい画像は、音楽情報サイトDiscogsにアップされているので、参考にリンク貼っておきます。ご興味のある方はご確認ください。

www.discogs.com

2001年リリースのアルバムです。もう20年昔かあ。

 

収録曲2曲目の《エレクトリック・ギター・フェイス(Electric Guitar Phase)》は、出だしからパワーにみなぎる一曲。ひとりのギタリストが多重録音をしています。根気いりますね。

ゆっくりとフレーズがずれていくことによって、縦の音の関係が変化していき、思いがけないリズム感を生み出していく音楽になっています。さらには新しいリズムを投下して、場を盛り上げています。

力強いクラシック音楽はBGMとしては押しが強すぎて苦しいものですが、《エレクトリック・ギター・フェイス》は耳に刺激的でありつつ思考の妨げになりにくい、刺激になる音楽です。感情的な展開のない、ミニマルミュージックならではの特性でしょう。

 

後半、山車を引っ張る人だかりが、掛け声威勢よく近づいては遠のいていくように聞えるんだよね。

心の奥底にひそむものが、引っ張り出されてきてる?これって、人によってイメージ違うんやろな。

 

Electric Guitar Phase

Electric Guitar Phase

  • Dominic Frasca
  • クラシック
  • provided courtesy of iTunes

 

 《東京/バーモント・カウンターポイント》は奇異な音楽で、使われている楽器はまさかのMIDI マリンバとなっています。そう、MIDIです!一種異様な脱力感いっぱいで、初期シンセサイザーの名曲《ポップコーン》に似たレトロ感覚たっぷり。もうMIDIだけに深く考えることの意味を放棄して、ただやみくもに流していくほかないでしょう。

 

Tokyo / Vermont Counterpoint

Tokyo / Vermont Counterpoint

  • Mika Yoshida
  • クラシック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 ライヒに詳しい方はもうご存じかもしれませんが、この2曲はすでに一度発表されているものを、別のアーティストが新しい楽器スタイルに編曲したものです。

  • 《Electric Guitar Phase》:1967年のヴァイオリン作品《Violin Phase》をドミニク・フラスカがエレキギターに編曲したもの。
  • 《Tokyo / Vermont Counterpoint》:原曲はフルート族(ピッコロ、フルート、アルト・フルート、テープに録音されたフルートの音)のアンサンブルのために作曲された1982年の《Vermont Counterpoint》。吉田ミカが機械的マリンバ音で編曲。

既存の曲の焼き直し2曲の存在が、このアルバムの大きな特色です。

 

《大アンサンブルのための音楽》は、小刻みなリズムの上を、クレシェンド&デクレシェンドで現れては消える金管楽器の効果的に繰り返される音楽です。 現代社会の深呼吸のような心地好さがあります。

1980年にECMレーベルからリリースされた同曲と比べると、非常に臨場感にあふれた録音になっています。まるで楽器群のまん中に座って聴いている気がします。ECM盤がリズムの面白さを引き出しているのに対して、このノンサッチ盤では空間的な広がりを体感できるところが魅力です。

2種類のディスクを比較して聴くと、楽器のからみ具合の妙がそれぞれで違っていて、「そこノンサッチ盤ではピアノがメイン?」など発見が多いです。

 

Music for a Large Ensemble

Music for a Large Ensemble

  • Alan Pierson
  • クラシック
  • provided courtesy of iTunes

というわけで、

だめなときはどんなに頑張ってもだめなものですが、だめをだめと諦めるより、まわりの空気だけでも変えていきたいものです。最悪のだめから普通のだめにするくらいのきっかけに、ライヒを聴いているという話でした。

 

 映像的な効果もあると、ライヒの魅力、ひいては感動の力も増すようです。以前の記事も参考まで。

www.yomkik.com

 アルバムとは演奏者が異なりますが、《大アンサンブルのための音楽》のライブ演奏風景の動画。ピアノは連弾だったんですねー、発見。演奏会というよりも、ファクトリーみたいな印象。こういうのをナマで聴いてみたい。


Steve Reich in 360° - Music For A Large Ensemble - BBC Proms