クラシック音楽手帖

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【キレとメリハリ】ノセダ&LSOのショスタコーヴィチ『交響曲第4番』レビュー

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2018年にリリースされた、ノセダ&ロンドン交響楽団(LSO)による、ショスタコーヴィチ交響曲第4番ハ短調 Op.43』のCDを入手して聴いてみました。ノセダという指揮者の演奏は初めてだったので、正直恐る恐るでした。

 

1. ノセダはどんな指揮者?

指揮者ジョナンドレア・ノセダの原綴りは、Gianandrea Noseda。生まれはイタリア。56歳という割には成熟した風貌をもつ、不思議なオーラのある方です。最近、少しずつCDやコンサートで活躍ぶりを見かける指揮者です。

ざっと調べただけでも、次のような指揮活動歴を持っています。

  1. BBCフィルハーモニック首席指揮者(2002-2011年)
  2. トリノ・レッジョ劇場管弦楽団音楽監督(2007-2018年)
  3. イスラエルフィルハーモニー管弦楽団首席客演指揮者(2011年~)
  4. ロンドン交響楽団主席客演指揮者(2016年~)
  5. ワシントン・ナショナル交響楽団音楽監督(2017年~)
  6. チューリッ-ヒ歌劇場音楽総監督(2021-2022年)

 


Gianandrea Noseda on Shostakovich’s Fourth Symphony

着々とキャリアを積んできている指揮者であることが伺えます。特に、劇場関係の活躍が目立ちます。劇場を中心とした指揮者としての姿は、ノセダを語るうえでの大きなポイントかもしれません。

 

2. 『第4番』の演奏内容は?

このCDの「LSO Live」というレーベルが示す通り、2018年11月のライブ録音。ちなみにSACDハイブリッドです(筆者はSACD未所有のため、CDでのみ確認)。

トラックは3つで、第1楽章展開部での分割はありません。

この盤の特色、それは「キレ」と「メリハリ」の良さだと感じました。

実は、ショスタコーヴィチの『第4番』は、単調に演奏すればとことん単調になりうる音楽です。いってみれば、楽譜通りに忠実に鳴らしてみても、機械ががちゃがちゃ音を立てているぐらいに素っ気ない。ある意味、幾何学的な音楽。そこにどう着色していくか、非常に難しい音楽だと言えます。

その点で、ノセダ盤は「キレ」と「メリハリ」で命を吹き込んだ『第4番』という印象だったのです。

 

展開部のフガート(楽曲中でフーガの技法を応用した箇所)で盛り上がってゆく、容赦なく淀みないテンポはいさぎよいほどです。軽々と重いものをばったばったと投げてゆくイメージとでもいいましょうか。

単調に演奏されることもなく、「キレ」と「メリハリ」で要所要所に表情がついている。そのことが顕著に表れるのが、第3楽章のさまざまなエピソードが転々と流れる箇所です。この箇所、演奏によってはすっごく退屈に聞こえてしまう。ところがノセダは決してダレることなく、メリハリのついた演奏。テンポの変化やダンスのリズムに豊かな表情を加味し、意外なほど人間的な第4番に仕上がっているのです。こんなにすんなりと聞かせる『第4番』も珍しい。


あくまで勝手な解釈ではあるのですが、オペラなどで劇場の効果に長けているノセダは、管弦楽を人のように歌わせることで、無機質な音楽をうまくコントロールしているのではないかと思うのです。
(ノセダと対照的なのがハイティンクロンドン・フィルとの盤。こちらは坦々とした不条理な展開が聴きどころで、これはこれで面白くてお薦めです)

来年2月には、このノセダ&LSOコンビで『交響曲第9&10番』のリリースも予定されているそうです。

 

Shostakovich: Symphonies Nos. 9 & 10

Shostakovich: Symphonies Nos. 9 & 10