クラシック音楽手帖

聴くことが楽しくなるための1ページ

【こういう本が欲しかった】中川右介『現代の名演奏家50』|意外と知らない演奏家の素顔

f:id:yomkik:20210117092359j:plain

 

音楽関連の本って、値段がめちゃ高い本かそうでないか、だいたい二つに割れているようです。専門的な本はだいたい高価で、なかなか手が出ません。

このあいだもエドガー・ヴァレーズの評伝本を思い切って買いましたが、五千円を超す立派な学術書ですので、そんなにしょっちゅう買うというわけにもいきません。読むのも大変です。

 

www.yomkik.com

 

よほど好きな作曲家であるとか、お気に入りの演奏者の本でないと、手を出す勇気がなかなか湧いてこないのが実情です。

 

本で安いといえば文庫本ですね。

クラシック音楽関連の文庫本は、あるにはあります。小澤征爾の対談ものや、フルトヴェングラーの執筆したもの、吉田秀和の著作など。どちらかといえば古典ともいえる本、古めの本が多い印象です。

クラシック音楽の最新動向を知りたい場合、個人的には雑誌(『音楽の友』『レコード芸術』)と、今回取り上げる新書がベストなように思います。新書の場合、執筆者によりけりで、偏り過ぎて気分を害するような本があるのも、新書の特色ではあります。気をつけるようにしましょう。

  1. 音楽界素人でも馴染みやすい。
  2. 嚙み砕きすぎずに、あくまで専門性を維持している。
  3. クラシック全体を網羅的に解説している。
  4. いたって真面目。

そんな音楽評論家として、現在私が注目しているのが、中川右介(ゆうすけ)です。

 

 

 

ふと書店で見つけて、『現代の名演奏家50』(幻冬舎新書を買ってみました。新書だから安くて薄めの本。とっつきやすさがベスト。「はじめに」の取扱説明書に相当する部分に、本の特色が次のように紹介されています。

この本は、ひとことで言えば、名演奏家たちのエピソードを集めた、二十世紀クラシック音楽界人物交遊録集とでもなろう。(中略) 音楽家たちそれぞれの生涯の概略を記した人物事典ではなく、それぞれの人生のある瞬間、ある期間を、他の音楽家との交流に焦点を当てて描いた。(p. 3「はじめに」より引用)

 

目的がはっきりしてるよね。

例えば、プレヴィンの遺したディスクにムターとのCD共演がありますが、実はムターがプレヴィン4度目の結婚相手だった!という事実をこの本で知りました。だから、プレヴィンの作曲したコンチェルトにムターの名前が入っていたのか・・・と今さらながらびっくり。

そうしたプライベートな話も含め、音楽家仲間のあいだでどのような刺激的なやりとりを繰り広げていたのか、そんな話がたくさん出てきます。代々の指揮者の入れ替わりに伴うエピソードや、レコーディングにでの共演に関するエピソード、20世紀特有の政治がらみのエピソード、などなど。

 

 

複数の演奏家の話のそれぞれに、同じ演奏家が顔を出してくることもある。音楽家の世界って、広いようでいて狭いのかもしれないなあ。

悪いこと出来ひんで。

一人一人についてもっと分量があってもいい気もしますが、欲が出る程度に留めた文章量で、「もっとグールドについて知りたい」というように、興味への糸口となる印象があります。諸井誠『交響曲名曲名盤100』に近いスタンスですね。

 

www.yomkik.com