(2021/1/31更新)
村上春樹の小説は、数多くのクラシック音楽を効果的に使っていることで有名です。
もともとはジャズ喫茶を経営していた村上さんなので、どちらかといえばクラシック以外のブルーノートなどのイメージが強い(特に初期作品)。
でも、不思議なことにその触手は、ロックもクラシックも蝸牛のごとく舐め回しています。
村上春樹は『ダンス・ダンス・ダンス』で初めて夢中になったのよね。失った人との見えないつながりや、「やれやれ」と言いつつ世界を切り開いている主人公の姿とか、いろんなところに惹かれたわ。
ウィキペディアで『ダンス・ダンス・ダンス』を調べると、ずらっと音楽のタイトルがが並んでる!
知らない音楽ばかりだわ。それに、タイトルが音楽由来って、昔からそうとう音楽好きな作家なのね。
どことなく同じ空気を感じるなあ。
おたく感が?
単なる小説というジャンルを越えた、未知の音楽への新たな気づきになることもあって、興味深い情報源です。まさに「つながってる」の世界に入っていきます。
でも、人の記憶というものは、結構あてにはならないもの。あとで思い返した時、すっかり忘れていたり、都合よく勘違いしていたりするものです。
都合の悪いことは忘れたいものですが、せっかく読書で手に入れたイメージは、大切にとっておきたいものです。
それだったら、リストにしておくのが一番じゃないかと思うんですよね。
というわけで、近著『一人称単数』に出てきたクラシック音楽を、掲載順に整理してみました。
もちろん、ネタバレにならないように、むしろ「なんだこれ?その箇所気になる」レベルになるように、最小限のことしか記入していません。
『一人称単数』に使われているクラシック音楽の大きな特色は、短篇「謝肉祭(Carnival)」に現れるシューマン熱です。ふと意気投合して『謝肉祭』のディスクを聞き漁る登場人物たち。中古盤蒐集癖のある村上さんなら現実にあるかも、と読んでしまいます。フィクションとノンフィクションの境目がわかりづらい小説なので、なおさらリアルに感じます。
意外と忘れやすいのは、「品川猿の告白」でのブルックナーへの言及です。女性の名前蒐集癖のある猿が、ブルックナーに関心があるというのも、いろいろ考えどころです。
こうしてみると、村上さんはクラシック音楽をかなり意識してるね。
ブルックナーを知らない読者が品川猿を読んだら、どないなるんやろ?
「壮大で意識高めの音楽を好んで聴いている」猿という意味が抜け落ちちゃう。
いうても、ただのすけべ猿やん。