クラシック音楽手帖

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未来志向な音楽を聴きたい!80年代ミニマリズムと青い空~アダムズとライヒ

希望あふれる音楽、前向きに未来志向な音楽、まるで青い空に溶け込むようなそんな響きに出会う、ヒントを書いてみます。

 

人は思いっきり夢を見ていいと思うのです。好きなだけ感想を述べたり、さまざまな感情を説明したり、未来を細かく描いたりできるのは、今のところ人のもつ特性のようです。つらいときだって、何でもないきっかけ一つで、進路変更することはできるものです。要は、心の持ちようなのです。

ふと私がそう一瞬考えるヒントになったのが、ジョン・アダムズの『シェイカー・ループス』を耳にした瞬間でした。1978年の弦楽六重奏の作品です。アダムズはアメリカの現代作曲家です。ワンフレーズだけ解放された気分に包まれてしまう、古典とは違う雰囲気をもった音楽です。

 

 

細部を積み重ねたこの手法を、ミニマルミュージックのと呼びます。『シェイカー・ループス』はのち(1983年)に大きな弦楽合奏用に編曲されて、広く知れ渡るようになりました。響きに幅がついたことで空間的なスケールが増しています。私がFMラジオで初めて耳にしたのが、少なくとも1988年より以前でした。現代音楽としては異例な早さで広まったようです。

室内楽版の線の細さをいかした超絶技巧のたのしみも格別で、その一方で合奏用の場合は雰囲気に溶け込むのに最適です。初めての方がまず親しみやすいのは、たぶん合奏用のほうでしょう。リリースされている録音も合奏アレンジのほうが大部分です。

 

瞑想的な性格をもつ音楽で、旋律よりもさざ波のような和声の繰り返しと変遷が魅力となっています。ヴィヴァルディの合奏を20世紀の語法で表現したような、現代でありながら古典的な雰囲気もあわせもつ親しみやすい現代音楽です。

 

Shaker Loops: 1. Shaking and Trembling

Shaker Loops: 1. Shaking and Trembling

  • provided courtesy of iTunes

 

20世紀後半、まだ冷戦真っただ中の時代に、こうした未来志向の音楽が息づいていました。

 

スティーブ・ライヒも同じく、いやそれ以上に未来志向のミニマルミュージックを描いてきました。アダムズよりライヒのほうが10年ほど先輩格で、60年代から頭角を現していました。

エド・デ・ワールトの同じディスクに収録された『管楽、鍵盤と弦楽のための変奏曲』の転がるような音の連なりを聴いていると、世の中のわだかまりなんてどうでもよくなってくる気がします。

大きく呼吸するような金管楽器と、体内をひっきりなしに循環するような木管楽器たち。ライヒの音楽には変容はあっても展開はない。展開は意図しないと生じないけれど、変容はゆっくりと時と共に流れてくる。わずかなずれや微かな重なりで変容は生じる。この『変奏曲』に耳を傾けることは、時を共有するだけで成立しています。

 

 

管楽、弦楽と鍵盤のための変奏曲

管楽、弦楽と鍵盤のための変奏曲

  • provided courtesy of iTunes

 

一方のアダムズの音楽には展開がある点で、ドラマ性が加味されることになり、時間軸に明確なスタートとゴールが示されている。もし、この二人の音楽の差異に迷った際は、展開=スタート&ゴールを念頭に聞くとわかりやすいでしょう。

アダムズとライヒの両者に共通する性格は、音楽であることを越えた何かを聞き取ってしまうという体験を得られること。ミニマルミュージックは当初からさまざまに批評されてきたものですが、根本にはサティの「家具の音楽」の思想が時代と形を変えて息吹を与えられた音楽なのです。

 

1980年代の青い空は、ずっと暗いと思い続けてきましたが、徐々に晴れ上がっていくのもいいなと最近は少し楽観的です。

 

Reich: Variations for Winds, Strings & Keyboards / Adams: Shaker Loops

Reich: Variations for Winds, Strings & Keyboards / Adams: Shaker Loops

  • 発売日: 2017/09/22
  • メディア: MP3 ダウンロード