クラシック好きの休日

隔日更新。特にクラシック音楽と本について。

オイストラフの呪術~プロコフィエフ『ヴァイオリン・ソナタ第1番』

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落ち着きたい!と思う時があります。音楽で「落ち着く」ことが何を指すのか、どうすれば落ち着く状態になるのか、考え始めると難しいものです。

過去のクラシック音楽の流行に、「アダージョ」だけをまとめた企画CDがありました。カラヤンの指揮する『アダージョカラヤン』はいまだに「究極の癒し」というキャッチフレーズがついて販売されるくらい、定番の強さを持っています。

 

 

そういった意味からすると、音楽の「落ち着く」とはテンポの問題なのでしょうか?正解ともいえるけれど、プラスアルファでもう一つの要素があってもいい気もします。それは「音楽の訴える言語的意味を持たないメッセージ、ある種の呪術的な雰囲気」です。もっと穏やかな表現を使えば、「つかみどころのある、夢見させてくれるような音楽」とでもいえるでしょうか。

そうした音楽は意外とあるようです。

絶妙に「落ち着く」一曲に私が推薦したいのは、プロコフィエフが作曲した『ヴァイオリン・ソナタ第1番』の第3楽章です。参考にその音楽の演奏動画を貼っておきます。

 


Benyumova, Goremykina - Prokofiev Violin sonata Op.80 - III

 

私がこの音楽を好きになったきっかけは、ソ連の名ヴァイオリニスト、オイストラフの演奏でした。モノーラル録音であることを気にさせない大胆な弾きっぷりには、まさに魔術的という表現が相応しいものでした。単調に繰り返されるだけの音型も、どこか呪術的。時々入れ替わるピアノの響きも幻想的で、その掛け合いに時間が流されていく様は、ずっとソノママデイイ感じです。

フツーのよくある音楽ではないのです。実際、妻がこの音楽を偶然耳にしたとき、「これなに?」と異様な違和感を示していました。

ロマン派までのソナタとの大きな違いは、朗々と唄っている点です。歌詞をつけてサラ・ヴォーンがピアノの前で歌ったら、さぞかし鳥肌ものの名曲になったのではないでしょうか。

20年以上聴いてきましたが、私のなかの心に定着しているのは、このオイストラフの演奏です。 

 プロコフィエフの魅力に憑りつかれて30年以上の私は、ステレオ録音でもさまざま同曲の録音を聞き比べてきましたが、最終的にはオイストラフに戻ってしまいます。

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