クラシック好きの休日

隔日更新。特にクラシック音楽と本について。

人生ツラかったら読め!『ほんまにオレはアホやろか』

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夏休み。読書感想文の宿題といえば、なんだか堅苦しそうなのが並びそう。『こころ』とか『人間失格』とか。人生ツラくなりそうな本ばかり。いっそのこと水木しげる『ほんまにオレはアホやろか』なんて怒られますか?

 

ついてない人生、悩まない人生

漫画家水木しげるの自伝。戦争時代から高度成長期までを満身創痍でかつ金欠で生きた男の話。『ゲゲゲの鬼太郎』の原作者だから、昔からツキまくってたいそう豪奢な人生を送っていると思ったら大間違い。

タイトルにあるように勉強はできないし、何をしてもうまく処理できない。いつも周りから「こいつアホちゃうか」と呆れて見られる。何べんも転職をして、その学力で行ける大学がないからと美大に通ったり、戦地でも死にかける。

帰還後も生活するうえで紙芝居作家から貸本マンガ作家と転々としながら、ぜんぜん儲からない。40歳を過ぎてやっと作品が売れ出すまで、この自伝はずっと貧乏神に憑りつかれっ放しの話。

そんな人生でも、水木さんは坦々と生きる。はしごをかけて渡り歩くような人生を、いろんなエピソードの中で生きる。常に移動し続けることが、生きる活力でもあるかのように生きる。いくつも学ぶべき教訓が水木さんの生き方にあるように思えてしかたない。

 

翻弄されるメディアの変遷

紙芝居が廃れ、貸本マンガも廃れ、というメディアの変遷は、現代のCD低迷と絡めると非常に興味深い。

もうこれではだめだという当時の紙芝居・貸本マンガ界はどんどん規模を縮小させて、作家の流出を招いていった。そして新しいメディアに活路を開く。それがマンガ雑誌であり、テレビアニメだったわけだ。

CDだけではなかったんだなと、読みながら身につまされる思いだった。

 

ついてなくったって、次のはしごへ

高度成長期に生まれた私は、一度でもついていないことが人生にあるだけで、落伍者のような気がしていた。不幸を引きずってしまう。ある意味、根性がない。

人生がついてないなりに、水木さんにはその中で生きていく根性があった。悲観的になっている暇なんてない。落ち込んでも、風邪と同じですぐ直る。そして不器用なりに夢中になることを見つけ、結果、描くことに生きることを向けていく。そんな水木さんの生き方の、いい意味でのいい加減さが、読んでいて励まされるのである。だからこそ、今の私の価値観なんてきれいさっぱり放り出して、「じゃあどうする?」と次のステップを踏み出したくなるような本だった。

 

ほんまにオレはアホやろか (講談社文庫)

ほんまにオレはアホやろか (講談社文庫)