クラシック好きの休日

隔日更新。特にクラシック音楽と本について。

昭和的な、余りに昭和的な未来幻想~星新一『ボッコちゃん』

夏はゆとりの時間がある分、読書にハードなものをと意気込んでしまいそうだ。

そこで力を抜くつもりで、星新一『ボッコちゃん』(新潮文庫)を選んで読んでみた。

ショートショート集。奥付の昭和46年発行からもうなずけるように、「昭和色」がかなり色濃く出ている。

「昭和色」とは何かといわれれば、デパートが消費のシンボルとして描かれていたり、労働者像が安定雇用だったり、後先考えず安易に開発してみたり、など。

 

もし、平成後半に生まれた子どもたちが星新一を前にしたら、時代流行のズレに敏感に気づくだろう。アウトレットも終身雇用崩壊もセクハラも登場しないショートショートには、現代では現実味が乏しくなってしまった。ポジティブに考えれば、よりファンタジー化したと言ってしまえるかもしれない。

 

半数以上の舞台は近未来世界で、「そういえばこんな未来を夢描いていた」的なイメージがたくさん出てくる。さすがに今の子どもたちの未来感と変わらないはずだ。ドラえもんに描かれる未来感が、いまだに通用しているから。予想できる未来はどんどん時間が先延ばしにズレていっているが、やがて来るべき未来として不変な人類共通のイメージなのだと思う。

 

ライトな感覚でゆったり読んでいるつもりでも、昭和世代の私としては、もう一枚のレイヤー、すなわち「現代との差異」が読書体験に覆い被さってくる。昔々、それこそ平成初期以前にも『ボッコちゃん』は読んだつもりだが、その時の純粋な驚きとは違い、再読してすごく不思議な違和感を体験してしまった。

昭和を未体験の平成生まれの人たちが昭和の夢想をどう感じるか、興味深く感じてしまう。

 

ボッコちゃん (新潮文庫)

ボッコちゃん (新潮文庫)

  • 作者:新一, 星
  • 発売日: 1971/05/25
  • メディア: 文庫