クラシック好きの休日

隔日更新。特にクラシック音楽と本について。

シンドラーよ、そこに愛はあったか?『ベートーヴェン捏造』

ベートーヴェンの伝記が捏造されていた」とは穏やかではない。でも、それが事実だとしたら・・・。

捏造事件を読み物風にまとめた、かげはら史帆『ベートーヴェン捏造:名プロデューサーは嘘をつく』(柏書房、2018年)は、その顛末をガイドしてくれる。

 

そもそも、この捏造の真実が明るみになったのは、1977年。もう半世紀前のこと。それなのに、「いまだ多くの人は知らない」(p. 9)とあるように、クラシック好きな私も初めて知ることばかりだった。

裏表紙を見ると、生真面目そうな紳士が、部屋中のノートを燃やしつつあるイラスト。壁面には亡き師匠ベートーヴェン肖像画。狂気が勝っています。そして現実にこうした焼却がおこなわれた。

どうしてそんなことを?

なぜ真面目そうな貴方が?

道を踏み間違えたことをする以上は、そこに理由がなくてはならない。

 

私は通読して納得しました。彼はベートーヴェンの付き人シンドラーという男。ベートーヴェン生前のひどい扱われ方、没後のフォロー。その点は合点がいきました。今の政治・社会でもその程度の隠蔽はよくあることではないでしょうか(良くはないのですが)。

親身に思っての捏造(たとえば師匠に不利になりそうなことの隠蔽など)と対照的な、シンドラーの保身・名誉欲に端を発する捏造は、一気に悪のレベルが高くなる。師弟愛はとことん美しくは、私利私欲は醜すぎる。この二つがごっちゃにならないように。

この本を読むうえでヤバいのは、シンドラーのエゴが暴走するときがポイントだと思いました。

でも、バリバリの詐欺師とは程遠くて、悪事を働くにも名士になるにも不器用すぎて、結局100年後にあっけなく捏造がバレてしまうわけで、非難する気にもなれませんでした。

これを読んだほかの方はどう思われたでしょうか?

2018年単行本刊行

 

 

ベートーヴェン捏造

ベートーヴェン捏造